Kenjiro Nagata, Between, cotton threads, variable size, 2015
通常、立体作品である彫刻はその表面を頼りにかたちとして成立しています。しかし、長田堅二郎の作品(たとえば「Between」)においては、両側の壁から伸びる刺繍糸が円柱として認識されるものの、その表面を見ようとしても糸と糸の隙間から奥の糸が目に入ってきます。また、光のあたり方によっては白色の壁面や陰影にとけ込んでしまいます。表面と構造に独特な方法では働きかけることで「外」と「内」が複雑に交錯し、長田の作品は「“みていること、みえていること”は常に一定ではない。それはこの作品以外の全ての事物にもいえることではないだろうか」といった思いを駆り立てます。彼の「Derivation」(派生)シリーズには輪郭線も、はっきりした境界線もありません。静脈しかない身体、水道しかない土、根しかない木のように・・・「ぼんやりとしながらも、たしかにある」長田の彫刻は、“存在する”ことを改めて感じるよう求めるのです。
Kenjiro Nagata, Derivation -draw the circle-, stainless steel, 55x55cm, 2012
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