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「機能外の構造」酒蔵における田附楠人によるアクリル樹脂作品の展示

蔵は、物を貯蔵する建築です。他に建築が蔵よりも、質素で、単純な建築物はあるでしょうか?蔵(つまり食料や物を必要でない時にしまっておくという構造)よりもより簡素で美的ではないものが存在するだろうか? 火災を防ぐための巨大な土壁、内部を一定の気温に保つための最小限の窓、空間を最大限に取るため、中央に柱はなく、熱を貯めないための暗闇。伝統的な日本の蔵は、機能的な目的以外の何物も持たない構造であるように見え、蔵が家の付属物であるという真実に疑いを持つ人は少ないだろう。

フランティック・ギャラリーは「機能外の構造 -酒蔵における田附楠人によるアクリル樹脂作品の展示-」を発表できることを光栄に思います。今回の展覧会はENTOMORODIAによりキュレーションされたものであり、大沢匠氏と、彼の、日本の伝統民家再生企業であるO設計室とのコラボレーションとなります。我々は、今回、既存の日本の蔵に関する実用面での認識の他に、蔵の構造とその役割の美的価値に着目し、伝統的な日本の美意識に注目したいと考えています。そこで、我々はコンテンポラリーアートの作家に声をかけました。
 田附楠人はアクリル樹脂を素材として用い、平面作品の基本原理を転覆させる「超構造的」作品を制作する画家です。田附の制作方法は透明なアクリル樹脂の表面を彫り、それによってできた空洞にアクリル絵の具を用い、それを反転させ、展示します。彼が絵画と彫刻の間の厳しい境界を秘かに犯します。つまり、彼の作品は彫ることと、塗ることから成っており、それは「塗る」という積み重ねる行為と、「削る」という取り去る行為の結果なのです。彼は、ヴォリューム、素材、「物質性」、物理的な深さを考慮すると、立体作品を制作していますが、面であり、表面性、壁面を利用した展示などを考えると、未だ平面の二次元作品です。これは田附が絵画の世界にいながらにして、作品に深さ、物理的量、複合的な表面に挑み、絵画の表と裏、両面において表現をすることで、絵画の「裏-表」という二重性を乗り越えた結果と言えるでしょう。
 田附の「Works with acrylic resin surface」を、歴史ある街である鎌倉の酒蔵へ持ち込むにあたり、我々は過去と未来の出会う「エニグマの瞬間」を創造します。それは、ここ30年以内に発明された熱可塑性樹脂の一種であるメタクリル酸メチルが、1世紀以上もの間、蔵を構成してきた土壁や、木の梁の中で展示される時であり、個々の作品の複雑な未来のトポロジーが、日本の世俗的な住宅建築の伝統である、暗く、冷たい構造の中に晒される時、それは、比類ない二つの人工物が共通して隠し持っている価値を暴露する瞬間なのです。そして、これは最終的に我々の展覧会のテーマとなる、実用的なアプローチの範囲外であり、日常的な機能のない、使われること/便利さ/能力/サービスなどの実用的な観点の外にある建築的/彫刻的/構造的特徴を持つ田附の作品と日本の蔵が出会う瞬間であるのです。
 したがって、今回の展覧会、「機能外の構造」は一種の「二人展」あるいは、「比較展」の計画の元にあるものだと云うことができます。これは、美術作品と建築という異なるジャンルのものの展示であり、明白な個人の作家が存在する作品と、非個人的に造られた建築という相違点を踏まえた上でも、我々は観る者に「パラレルであり、折り混ざっている」というこれらの構造の与える美的な力による体験をして頂ければと思います。この二元的関係の中で、起源の上で無機能な生産とされる美術作品である、田附のアクリル樹脂絵画が、実用的な側面によって認知されている蔵に影響することにより、この実用的な側面を二次的にさせ、美的強さはより表面へ押し出されるでしょう。言い換えるならば、蔵が美術作品を貯蔵することにより、蔵には作品という魂が乗り移り、そこへ宿りそして、それが常識や、日常生活から蔵を、無制限な想像と美術の暗い面へ引きずり出すこととなります。ここで、我々は蔵の構造自体が本来持つ、内部の暗さ、音の静けさ、限られた出入口などの、建築自体の持つ要素によって、蔵は悪いことをした子どもへのお仕置きの場として最も使われる場所の一つとなってきたことを思い起こします。何世代にも渡り、いたずら好きな子どもは、このような空間の中で、暗闇と深い恐怖による幼い想像から逃れようと時間を過ごしてきました。そして、当初の蔵の目的である用途のための構造として、絶対的に遮断された「外部」と「内部」は、犯罪のために最も都合の良い場所となることを、日本の作家によって気付かされました。蔵のシンプルな構造と、最小限の装飾のお陰で、どんな小さな変化でも、蔵に都市のメッセージをつかませ、発せさせることができます。例えば、小さな差異を持たされた蔵は、その家の豊かさなどの状態を示すこととなり、時には侍と商人という位の間での争いのきっかけとなることもあります。したがって、この建築の構造と、それが持つ空間は、蔵が元々持つ強い機能性にもかかわらず、芸術的表現を語り、表し、送り届けているのです。
 このように、「機能外の構造」展は、具体的な作品の特徴に重点をおきながら、(人間の手によって作られた際の)ミニマルな構造においても創造性の光が見えることを示す目的を持ちます。それは、酒造の空虚な空間の中の木の梁、柱のネットワーク、または美術作品のアクリル樹脂の面における幾つかの傷跡にしても…


酒蔵について

結の蔵は元々秋田県湯沢市の銘酒「小野之里」で著名な高久(たかく)酒造の酒蔵であった。移築前の蔵から発見された棟札には明治21年と記されており大正14年の湯沢市大火や地震・風雪に1世紀以上耐えてきた蔵であった。2尺(60cm)間隔に並んだ5寸(15cm)角の栗や桧の柱、長さが10間(18m)もある1本物の杉丸太の棟木など構造は雄大であり状態も良かった。高久酒造現当主の高久正吉氏は、蔵の周りにビルが立ち並び、蔵を存続する為の周辺環境が悪くなった事から、蔵の解体を決意した。話を聞いたJMRA会員の大沢匠氏は、神奈川県鎌倉市に蔵を移築し賃貸住宅を作る事を以前から希望していた会員の田中芳郎氏に連絡し一緒に湯沢市へ赴き、引渡し契約が結ばれた。平成14年末から大沢氏の主宰するO設計室によって再生計画が始まる。調査、解体、設計、着工、輸送、移築、竣工などの段階を踏み、平成17年3月、調査から約2年の月日が流れて酒蔵は鎌倉で甦った。

田附楠人

1982
Born in Osaka, Japan
2007
Tama Art University, Department of Graphic Design, B.A.
2010
Tama Art University, Department of Painting, M.A.

Solo Exhibitions

2010
"Structure beyond Function", Traditional Japanese Sake Storehouse, Kamakura
2009
"Tazuke Cousteau Solo Exhibition", ANOTHER FUNCTION, Tokyo

Group Exhibitions

2012
"OUT of FLAT!", Galerie Hengevoss Duerkop, Hamburg, Germany
2011
"Alternative Lines", Frantic Gallery, Tokyo
2010
"2010 FRANTIC UNDERLINES", Frantic Gallery, Tokyo
2009
"circle", CCAA, Tokyo
"Wakuraha", Gallery .b.Tokyo, Tokyo
"Graduation Works Exhibition",The National Art Center, Tokyo
2008
"no border", Tama Art University Gallery, Tokyo
2007
"Graduation Works Exhibition", Tokyo International Forum, Tokyo